インタビュー
私ならではの、ちょっと意外性のあるフレンチでお客様に感動していただきたい
オーナーシェフ
山崎正一氏に聞く
オーナーシェフ 山崎正一氏:
1956年生まれ。和食の世界に憧れ、71年に料理の道に入る。81年、埼玉で和食店「鰻正」をオープン。20年間料理一筋に邁進し、2001年、那須に地元の食材を使って食を楽しめる宿を開業する。05年、高原の究極の眺望と、地元の食材を生かしたオリジナルコース料理を味わえるオーベルジュ「高原の指定席 ザ・ヴィンテージビュー」をオープン。11年には那須塩原市に、オリジナルソースのハンバーグをメインとしたレストランを開業する。
部屋、露天風呂、ダイニング、テラス……、施設内の随所から一面に広がる那須高原を堪能できる「高原の指定席 ザ・ヴィンテージビュー」。春の新緑、夏の蛍、秋の紅葉、冬の雪と季節ごとに変えるその表情を、和洋のコラボレートも鮮やかな「創作フレンチ」とともに楽しめる極上空間に、足繁く通われるお客様も数多い。このあふれんばかりの魅力に満ちたオーベルジュについて、オーナーシェフの山﨑正一氏にお話をうかがった。
この場所以外での開業は考えられない、その思いが原動力となりました。
「高原の指定席 ザ・ヴィンテージビュー」を訪れると、まず眼下に広がる雄大な那須高原に言葉を失う。これほど開放感あふれる風景が展開する地は、そうはないだろう。
「そうですか(笑)。いや、そのようにおっしゃって頂いてうれしいです」
「『那須高原』と一般的に言いますが、真に『高原』の名に値する所はそうはありません。いや、ここしかないとすら言えると思います」
改めて目をやる。何も遮るもののない高原風景。一体どこまで見渡せるのか……。「一望千里」とはまさにこのことであろう。
「とにかく、1年を通じてどの時期にも『高原』のイメージを満喫できる風景があふれています」
「たとえば、春の新緑や秋の紅葉は言うまでもありませんが、夏の蛍、それに少し趣は変わりますが、花火も実にきれいです」
「冬は雪景色ですが、逆にここは日当たりがよく、雪がいつまでも残っていないのがいいんです」
と、言いますと?
「この辺りまででしたら、ノーマルのタイヤで来られるのです。日が当たるので、アイスバーンにならないんですね。ここから少し上がると、もうダメですから」「また、風の流れもいいんです。ですから、少し雲が出てもさっと流れていき、すぐにきれいな青空を見ることができます」そうやって刻々と流れていく空気が、何とも言えない雰囲気を演出しているのだろう。
ですが、と言いながら山﨑シェフが遠くを見た。
「この場所で開業するまでには、筆舌に尽くしがたい苦労がありました」
「周囲の方は異口同音に、『よくあの場所が手に入ったね』と驚いていたほどです」
どのような経緯があったのだろう。
「ここは、お金を払えば売ってもらえるという所ではなかったのです。それだけ地主さんの土地に対する思いが強かったんですね」
「ですから私も、『お客様をお連れして那須高原を楽しんで頂くには、この場所しかないんです』ということを情熱をもって訴え続けました」
「もちろんそれだけではありません。まずは農家さんをはじめ、地元の方々と密着し、信用を得なければなりません。学校行事への協力とか、いろいろなお手伝いをさせて頂きました。そういう中で少しずつ信頼関係が構築されてようやく私の熱意が理解され、具体的な話に発展していったのです」
ここは、ただ見晴らしがいいというだけの場所ではなかったのだ。
様々な人々の、この場所に対する利害を超越した熱い思いがあるがゆえに、一段と素晴らしい空気感が醸し出されているのだろう。
こうして山﨑シェフの強い思いが実って開業に至った「高原の指定席 ザ・ヴィンテージビュー」。2009年には別棟が完成、11年には姉妹店のハンバーグレストランが開業と、発展を続けている。
お客様に喜んで頂くこと、それを最優先に考えています
今度は料理について具体的にお尋ねした。「オーベルジュの場合、基本的に料理はお任せになります。実際に運ばれてくるまで、何が出されるかは分かりません。そこで極力地元の食材を使って、意外性のある物をお出ししてお客様に喜んで頂くことを心がけています」「大切なのは料理だけではありません。オーナーである私がテーブルにおうかがいしていろいろなお話をさせて頂く。そういうやりとりの中でお客様に親近感を抱いて頂き、『また来たいな』と感じて頂けるようにしたいと思っています」
意外性のある料理とはどのようなものでしょう?「基本はフレンチのコースですが、そこに和食の要素を取り入れていくのがポイントです。もちろん和食がメインというわけではありません。あくまでもソースや添え物に加えて、意外性のある組み合わせを楽しんで頂くのです」どのような感じなのでしょうか?「そうですね、たとえばハマグリを焼いて食べる時に、味付けはどのようにしますか?」やはりお醤油ですね。
「その通りです。では、そのイメージをふくらませて、ムール貝をお出しする時にジェノベーゼソースに生姜と玉ねぎを加えてみます。するととてもいい風味になって、『貝類は苦手』とおっしゃる方でもすんなり食べられるのです」
「また、ハンバーグのソースも好評を頂いているのですが、これは酢を利かせたオリジナルです。日本人はやはり子供の頃から醤油や酢になじんでいますから、そういう味を生かした物は抵抗なく喉を通るんです」
「ステーキのソースも同様です。玉ねぎのスライスを酒と醤油で漬け込んで、さらに味醂とオリジナルのスパイスを加えて作ります。こうすることにより、通常のデミグラスソースとは一味違った味わいとなるのです」 意外性を謳う料理はさほど珍しくはないが、往々にして作り手の自己満足に終わりがちな感がある。
だが、もちろん山﨑シェフの作る料理にそういうことはない。
確固とした技術とおもてなしの心に裏付けられたお皿は、上辺だけの『意外性』とは明らかに次元が異なり、どれも深い感動を与えてくれるのだ。
繰り返し訪れるゲストが多数いらっしゃるという事実が、その何よりの証拠である。
「通常のフレンチのコースに、和食のお皿を追加されるお客様も珍しくはありません。今日は鮎の塩焼きと鰻の柳川鍋を頼まれた方がいらっしゃいます」
「また、暑い時期になればお蕎麦をお出しします。やはり私のオリジナルの出汁で召し上がって頂くのですが、専門店より美味しいというありがたい言葉をたくさん頂いています」
お話を聞くにつれて、料理の奥深さに言葉を失う。
「もちろんお出しできる物に限度はありますが、『うちはこの料理しかない』というスタンスはとりたくありません。仮に『ラーメンを食べたいんだけど』とおっしゃるお客様がいらっしゃったとします。オーベルジュでラーメン? でも、もし材料があって、私のとったスープでいいというのであれば、喜んでお出ししますよ」
「食というのは、人間の幸せに直結するものだと思います。それだけに、お客様には何よりも私の料理で至福の時を過ごして頂きたい、その思いで厨房に立っています」
あらかじめおっしゃって頂ければ、和洋中何でも作りますよ、と笑う山﨑シェフ。
その懐の深さに、ただ圧倒されるのみであった。
偶然の出会いが、オーベルジュ開業へとつながりました
最後に、オーベルジュを開業するまでの経緯をうかがった。「私は若い時に、和食のお店を経営していました。かなりの規模でしたから、従業員もそれなりの数にのぼります。そのため、社員旅行の宿泊費が相当かかっていました。そこで、いっそのこと旅館を丸ごと買ってしまえないか、というのが出発点となったのです」「その発想が、いつしか『宿を経営したい』というように発展していきました。それも、できたら地元の物を使って充実した食を提供できる宿が理想でした」それが「オーベルジュ」へつながったのはどうしてだったのでしょう?「きっかけは、本当に偶然でした。ある時私はハワイに行っていました。その時、何気なく手にした雑誌に、現在日本オーベルジュ協会の理事長を務めておられる勝又登氏のインタビューが載っていました。その記事に深い感銘を受けたのです」
「その時、私は『オーベルジュ』がどのようなものなのか、よく分かっていませんでした。しかし、地元の食材を使い、和や洋といったジャンルに過度にこだわらないレストランをメインとした宿泊施設、そういうものを全国に広めていきたいという言葉に、心底感激しました」「それから実際に自分の施設のスタッフとオーベルジュに足を運んでその魅力を実感する中で、『こうした素晴らしい施設のオーナー方と交流を深め、日本中にオーベルジュを広めたい』という気持ちになりました」偶然。山﨑シェフご自身の口から出たこの語は、確かに事実を端的に物語るものであろう。しかし、元々シェフの心の中に、もっと高いレベルでお客様をおもてなししたいという気持ちがあったからこそ、1冊の雑誌との出会いを見逃さなかったのではないだろうか。「そうですね。私の心の中には、絶えず勉強したい、何か新しいことにチャレンジをしたいという強い気持ちがあります。そういう思いが、オーベルジュとの出会いを生んでくれたのかもしれません」
「これは夢なんですが」
シェフが隣の土地に目をやった
「あちらの1000坪ほどの土地を買って、カフェレストランを開きたいですね。この景色を見ながらコーヒーを楽しめる……。そういうお店をぜひ作りたいなと思っています」
目を閉じると、高原のさわやかな風の中、瀟洒なカフェレストランでくつろぐお客様、そしておだやかな笑みをたたえる山﨑シェフのお顔が浮かぶようであった。
常に前を向いて力強く進んでいく山﨑シェフ。
その夢は、まだまだ果てることがないようだ。
次はどのようなサプライズを見せてくれるのであろう? その期待に胸をふくらませて、多くのお客様が繰り返し足を運ぶ。
そう、まさにここは「高原の指定席」なのだ。
食の世界
「ここに来てよかった」というオーベルジュであり続けたいと思います
料理
和食をルーツとする山﨑シェフだけに、巧みに和のテイストが取り入れられているのが特徴である。たとえば、生姜のような馴染みのある香辛料を使ったり、味にまろやかさを加えたりしているので、フレンチをはじめとする洋食系の料理に慣れていない方でも、すんなりと食べられる。また、フレンチのコースに和食のお皿を追加するというようなアレンジに関しても可能な限り応じてくれるので、予約の際に相談をするといいだろう
食材
地元の豊かな恵みをふんだんに使用。特に野菜や米は、ほとんどを決まった農家から取り寄せている。また、食材の代表格は何と言っても「那須和牛(黒毛和牛)」だ。ステーキにしても、煮込んでも、そのしっかりした味で食べる者をうならせる。また、山﨑シェフのオリジナルである酢と玉ねぎのソースが、肉の旨みをぐっと引き立たせ、一度口にしたら虜となることまちがいない。なお、調理はもちろん、客室まで含めてお客様の口に入る水は、すべて「磁気活性水」とする徹底ぶりだ。
お酒
山﨑シェフの料理に合うワインが各種そろえられている。中でも人気が高いのは、オリジナルラベルが鮮やかなドイツの白ワインだ。グラスにも気が配られていて、赤、 白はもちろんのこと、味のタイプや飲むお客様が男性か女性というところまで考慮して選んだ物を、シェフが運んできてくれる。また、露天風呂で楽しめる「オリジナル乾杯セット」も用意されている。高原の眺めをひとりじめしながらの乾杯は、格別の味だ。
食空間
吹き抜けになっていて開放感あふれるロイヤルダイニングは、2人連れのお客様が落ち着いて食事をできるスペースと、家族や仲間とともに気兼ねなく楽しめるコーナーに分かれている。中でも人気が高いのが、那須高原が一望できる窓際の席。その美しさに、しばし食事をとるのを忘れる方も多い。また、オーナー自らが丹精こめて磨く床や、天使をはじめとしたかわいらしい小物の数々も、充実した食空間を演出している。
スイーツ
肉料理の後であることを配慮し、アイスクリーム仕立てのような口どけのいいものが基本となっている。そのため、しっかりとしたステーキや煮込みの後でも、すんなりと口にできるのがうれしい。また、季節によって素材は変わるものの、シーズンには栃木を代表する食材であるイチゴ「栃おとめ」が供され、大人気を博している。
メニュー
朝食〜PetitDejeuner
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グリーンピースのスープ
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ハム、ポテトサラダ、オムレツ、生野菜(チーズドレッシング添え)
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パン(ミニフランス、チーズ、よもぎ)
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自家製ヨーグルト
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季節のフルーツ
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コーヒーまたは紅茶
(メニューは一例につき、変更する場合がございます)
夕食〜Dinner
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サラダ 特製ゴマドレッシング
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自家製鴨スモーク ケチャップと味噌のソース
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ムール貝のオーブン焼きと筑前煮
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アコウ鯛のクリームソース
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和牛ヒレ肉のステーキ
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季節のデセール
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コーヒーまたは紅茶
(メニューは一例につき、変更する場合がございます)
アルバム
サラダ | 鴨のスモーク ケチャップと味噌のソース |
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ムール貝のオーブン焼き | ハンバーグ |
ワイン | リース |
部屋 | ルームサービス |
オープンテラス | 露天風呂(高原の湯) |
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